活動レポート

平成30年5月実地医家のための会例会報告

世話人代表 石橋幸滋

 平成30年5月13日(日曜日)東京医科歯科大学B棟5階症例検討室にて、第595回実地医家のための会例会が開催された。
 会は二部構成で、第一部は「日本の医療保険制度のこれからと実地医家の役割を考える」(プレゼンテーター 石橋幸滋)と題して、今回の診療報酬改定を通して、国が考える日本の医療保険制度の目指す方向性と、それに対して我々実地医家がどう対応すべきかを考えた。
 そして、第二部では、昨年の例会で好評だった「知っておきたい処方、知らなきゃ損する処方アラカルト」の第3弾を行った。

第一部

平成30年4月に診療報酬と介護報酬の同時改定が行なわれたが、この改定は超高齢化社会を迎えた日本の2025年問題だけでなく、2040年そして2060年の日本の医療介護体制を推測する重要な改定であった。
この第一部では、平成30年度診療報酬改定の概要(厚生労働省HP資料http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000197979.pdf)に基づいて、日本の現状と将来予測、そして医療の問題点と今回の診療報酬改定の基本方針、概要を紹介した。
そのポイントは、

Ⅰ.地域包括ケアシステムの構築と 医療機能の分化・強化、連携の推進
 1.医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
 2.外来医療の機能分化、かかりつけ医の機能の評価
 3.入退院支援の推進
 4.質の高い在宅医療・訪問看護の確保
 5.医療と介護の連携の推進

Ⅱ.新しいニーズにも対応でき、安心・安全で 納得できる質の高い医療の実現・充実
 1. 重点的な対応が求められる医療分野の充実
  1) 小児医療、周産期医療、救急医療の充実
  2) 緩和ケアを含む質の高いがん医療等の評価
  3) 認知症の者に対する適切な医療の評価
  4) 地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価
  5) 感染症対策や薬剤耐性対策、医療安全対策の推進
  6) 適切な腎代替療法の推進
 2. 先進的な医療技術の適切な評価と着実な導入
  1) 遠隔診療の評価
  2) 手術等医療技術の適切な評価

Ⅲ.医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進
 1. チーム医療等の推進(業務の共同化、移管等)等の勤務環境の改善
 2. 業務の効率化・合理化

Ⅳ.効率化・適正化を通じた制度の 安定性・持続可能性の強化
 1. 薬価制度の抜本改革の推進
 2. 費用対効果の評価
 3. 調剤報酬(いわゆる門前薬局等の評価)の見直し

であった。
 これらに加えて、診療報酬改定につけられた付帯意見が、今後の医療政策を予測する上で重要な鍵となってくるが、その方向性としては、

1. 病床機能の分化促進による高度急性期病床の削減
2. 地域包括ケア病床の増加による在宅復帰促進
3. ビッグデータのさらなる活用
4. かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬局などのかかりつけ機能強化
5. 医療介護連携の促進による入院中心医療からの脱却
6. ジェネリック薬品使用促進や薬価制度の抜本的改革による医療費抑制

などが、今後の改革の柱になってくることが予想される。
 我々実地医家は、この方向性をしっかり見極めながら診療していく必要があるが、この方向性はこれまで実地医家のための会が目指してきた方向性と一致しており、我々は自信を持って、自分たちが今医の本道を歩んでいることを誇ってよいのではなかろうか。

第二部

症例1.腰痛症

 80歳の男性で、20年来の腰痛が最近ひどくなった患者に対して、どのような鎮痛薬を使うかを、日本整形外科学会・日本腰痛学会が2012年に出版した「腰痛診療ガイドライン2012」に基づき、参加者と一緒に検討した。
 特に、いわゆる消炎鎮痛剤(非ステロイド系消炎鎮痛薬NSAIDs、非NSAIDs消炎鎮痛薬)の中からいくつか自分がよく使う薬を決めておくこと、またオピオイド系鎮痛薬も最低一つは使えるようになっておくことなどが必要であるという意見が共有化された。
 また、各鎮痛薬の作用機序、作用時間、特徴などを理解して、副作用に注意しながら使用することの重要性も確認された。

症例2.うつ病

 50歳の男性銀行員の症例に対してどのように対応していくかについて検討した。
 まず大切なことは詳細な問診を取ることであることは言うまでもないが、どのような治療を選択するにしても、自分自身の力量を知ることが重要である。その上で、「日本うつ病学会ガイドラインⅡ.うつ病(DSM–5)/大うつ病性障害2016」に基づいて、実際の治療をみんなで検討した。
 特に重要なガイドラインに示された「うつ病の薬物療法の基本的考え方」を確認すると共に、うつ病の治療薬である三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRI、NaSSAについて、それぞれの薬の特徴や使い方などを確認した。

例会資料