活動レポート

平成29年9月実地医家のための会例会報告

 平成29年9月10日第592回実地医家のための会例会を東京医科歯科大学B棟5階症例検討室において開催した。
 今回は、「知っておきたい処方、知らなきゃ損する処方アラカルトPart2」と題して、4月に行ったPart1に引き続き、様々な疾患の処方を実地医家の目から、標準治療とされている処方と比較しながら参加者全員で検討した。
 今回は若干参加者が少なかったが、その分中身の濃い全員参加の例会となった。
 当日使用したパワーポイント資料を添付したが、糖尿病2例(経口薬導入とインスリン治療例)、逆流性食道炎、脂質異常症、便秘、骨粗鬆症について検討した。

症例1.糖尿病(経口薬導入例)
 61歳の糖尿病患者で、本来ならばインスリン導入が適当と思われるが、仕事の関係で入院はできない、付き合いが多く食生活や運動習慣の改善が難しい患者に対して、どのような治療薬を選ぶかを検討した。もちろん糖尿病治療ガイドラインに沿って、インスリン抵抗性の有無を調べた上で、ビグアナイドから導入すると意見が多かったが、DPP4阻害薬やグリニド系を使うという意見もあった。また、肥満があればSGLT2の使用も検討すべきという意見もあったが、基本的な生活習慣指導をしっかり行うべきであるという意見が一番多かった。

症例2.糖尿病(SGLT2阻害薬及びインスリン治療例)
 44歳の糖尿病治療困難例で、28歳より糖尿病を指摘され、各種経口薬を使用して来たがなかなかコントロールできず、インスリンを導入した。当初はノボラピッド3回打ちでコントロールされていたが、そのうちにランタスも使用するようになり、徐々に体重も増加し、100kg以上になった症例である。
 この間、睡眠時無呼吸、脳梗塞、狭心症、下肢動脈閉鎖症に加え、子宮癌も併発しているが、病識が薄く、生活習慣改善もなかなかできない患者で、参加者からもその点についていろいろ意見が出た。また、その後SGLT2を使用するようになり、一時は体重も減少すると共に、糖尿病のコントロールも改善された。現在は、また体重が増加してきており、それに伴いHbA1cも増加している現状に、具体的な解決策は出て来なかった。

症例3.逆流性食道炎
 50歳の逆流性食道炎の症例に対して、まずはプロトンポンプ阻害薬を選ぶのか、それともH2ブロッカーを選ぶのか、はたまた粘膜保護剤や胃酸中和薬、消化管運動機能改善薬、漢方薬を選ぶのか参加者で話し合った。
 やはり、最近はPPIを選ぶ先生が多かったが、患者さんの費用負担を考えてH2ブロッカーを選択される先生も少なからずおられた。また、粘膜保護剤や胃酸中和薬を選択する先生は少なかったが、併用される先生は少なくなかった。

症例4.脂質異常症
 62歳男性の症例に対して、動脈硬化性疾患予防ガイドラインを基に薬の選択を検討した。吹田スコアでは9%(中リスク)であったが、冠動脈疾患発症予測アプリを用いたところ11.0%(高リスク群)と、同じ症例で若干リスクの違いがあるものの、この症例に対してスタチンを使用するかしないかを検討した。
 まずは生活習慣の改善が重要であることは間違いないが、症例のような会社役員で付き合いが多く、運動する時間はゴルフぐらいという立場ではなかなか生活習慣の改善は難しく、スタチンを使わざるを得ないだろうという話になった。最近はスタチンの多くがジェネリックになっているため、ジェネリックを使用するという先生が多かった。
 また、PCSK9阻害薬やMTP阻害薬を使用した経験のある先生はいなかったが、まだまだ実地医家のレベルで使用する薬ではないと思われる。

症例5.便秘
 70歳男性の癌末期でオピオイド使用している症例を基に、便秘の薬を検討した。特にマグミットやプルゼニドなど基本的な便秘薬で改善しないような便秘では、次の一手としてラキソベロンやアミティーザ等を使用される先生が多かった。最近オピオイド使用例の便秘に対してナルデメジン(スインプロイク)が使用されるようになってきたが、これを使われる先生は少なかった。
 また、高玉先生より高齢者で認知障害がある患者さんの便秘例をご紹介いただき、リナクロチド(リンゼス)により便秘が改善したとの貴重な報告をいただいた。

症例6.骨粗鬆症
 70歳女性の症例をもとに、特に自覚症状のない骨粗鬆症の治療について検討した。骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015を基に、このような症例に薬物治療を行うべきかについて、参加者の意見を伺ったが、BMDがYAMの70%未満であれば治療開始の基準となるものの、中には特に症状もないし、元気で運動している女性に治療はしないと言われる先生もおられた。
 また治療を開始すると言われた先生の中でも、ビスホスホネートを使用するという先生もおられれば、カルシウム製剤とビタミンD製剤のみ使用するという先生もおられて意見が分かれた。また、骨折既往のある患者の治療に関しても、RANKL阻害剤、副甲状腺ホルモン製剤を使用している先生は少なく、骨粗鬆症の治療に関しては今後更なる検討が必要であると感じた。
 加えて、資料にあるように、角先生よりご提供いただいた大澤稔先生の御講演「プライマリ・ケア医のための骨粗鬆症治療」のまとめは、実地医家の骨粗鬆証治療に大いに役立つので参考にしていただきたい。

以上、6症例を基に参加者の経験や意見を交えて検討を行った。参加された先生方からは大変有意義であったという感想をいただいたが、特に薬剤師の先生からはお礼のメールもいただいた。
 なお今回も腰痛症とうつ病症例の積み残しがあり、来年はPart3を企画したい。

例会資料